こんにちは、たくちゃんです。
前回は海保の隊員が漂流しているGLORY-MARUに乗るところでまで解説しました。
今回は…
あらすじ
謎の海面爆発が発生、はまなみやアクアラインに被害がでます。主人公、矢口蘭堂が登場。初期対応を始めます。
みどころ
映像的伏線。字幕、早口での専門用語の応酬。今作を観るにあたってのウォーミングアップが始まります。
GLORY-MARU船内
船内のテーブルには
宮沢賢治の詩集「春と修羅」
inter depadepartment deliveryの封筒
折り鶴
が置かれていれています。
また別のテーブルには海図と眼鏡が置かれています。
「春と修羅」は1924年に発行された宮沢賢治の詩集(賢治曰く心情スケッチ)です。
その中で妹の死を題材にした「永訣の朝」という作品は有名で今作では言及されませんが、牧吾郎教授の心境としては「永訣の朝」の内容が深く関係していると思われます。
「inter depadepartment delivery」と書かれた封筒。
Interdepartmental deliveryを日本語に訳すと、「省庁間の配達」や「部門間の配達」となります。
これは異なる省庁や部門間で情報や文書などを共有し、相互に配送・受け取りを行うことを指します。異なる組織や部署間での連携や協力が必要な場合に、情報や資料を円滑に共有するためのプロセスや手続きを意味します。
後にゴジラ対策のカギになるetc.が同封させれています。
折り鶴は後に立案される矢口プランのマスターピースになるアイテムです。
船内操作で人の姿が確認できなかったため、
はまなみはGLORY-MARUの曳航(えいこう)準備に入ります。
曳航とは車で言う所のレッカー移動のようなもの。
はまなみには多目的クレーンやウインチが搭載されていて、これによりGLORY-MARUを曳航する予定でした。
しかし、突然大きな揺れが起き…
異変
突然、爆発が起き巨大な水柱が上がります。
画面の手前を警笛をならして走る東京モノレール。
東京湾アクアラインのアクアトンネルが崩壊し、
赤い水がトンネルの中に流れ込み走っている車が流れこみます。
後に出現するゴジラは形態変化の度に体液を放出していました。
また鎌田に上陸した時にはエラから、
放射線流を吐く直前には口から大量の体液を嘔吐物のように吐いていました。
つまりにこの爆発によりゴジラが誕生、あるいは急激な形態変化をしたことが推測できます。
首相官邸
場面は変わって東京都千代田区 首相官邸。
志村祐介内閣官房副長官秘書官が電話連絡を受けた情報を主人公、矢口蘭堂内閣官房副長官に報告します。
志村が電話視点で受話器を置くカットは実相寺昭雄監督の独特のアングルを彷彿するシーンです。
内容は以下の通りです。
集約センターから第1報連絡です。アクアライントンネル上り線で亀裂により浸水。詳細は不明ですが車両数台が巻き込まれた模様です。先程、官邸連絡室設置されました。緊参チームに参集指示が出ています。
日常生活で聞かない用語のオンパレードであるので解説したいと思います。
集約センターとは
内閣官房の内閣情報調査室に設置された「内閣情報集約センター」のことです。
阪神淡路大震災の時に総理に第1報が届いたのが発生の1時間半後だったことを教訓として1996年に設置されたものです。
24時間体制でマスコミや民間公共機関、関係省庁などから情報を収集、集約して内閣が速やかに緊急事態に対する初動対処体制を確立することを目的としています。
官邸連絡室とは
首相官邸の地下1階にある危機管理センターに緊急事態の際に設置される組織のこと。
志村の報告を受けた矢口が「今は情報が欲しい、下に下りよう。」と言った「下」とはここを指します。
情報を収集して総理や官房長官、官房副長官に報告する「情報連絡室」
その機能に加え、各省庁の間で調整が必要な場合には「官邸連絡室」
さらにそこに、初動対処が必要なものには「官邸対策室」
と緊急事態の規模や種類、対処のレベルによって機能が異なった組織に分けられています。
劇中ではまず官邸連絡室にが設置され対応を行いますが、
事態の進行が予測できないと判断した郡山危機管理官により官邸対策室に改組(かいそ)されます。
もし逆に事態が落ち着いた場合は情報連絡室に改組される場合もあります。
緊参チームとは
緊急参集チームの略称です。
緊急事態の種類によってあらかじめ決められた関係省庁の局長級の幹部が危機管理センターに集結して内閣危機管理官(劇中では郡山)の下で情報集約や初動処置の調整を行うチームです。
東日本大震災の際は14分後に参集、協議が開始されています。
主人公、登場
物語の主人公、矢口蘭堂登場。
しかし廊下を話しながら歩くシーン、しかも逆光で顔がはっきりませんません。
登場人物の中で初めてはっきりと顔が見えるのは受話器を置く場面の志村です。僕は今作を初めて観た時、志村が主人公だとしばらく勘違いしました。
シン・ゴジラという作品が個人のドラマではなく群像劇を描くということを象徴しています。
今回のまとめ
作品が始まって2分が経過しましたが未だに登場人物の顔がはっきりと映りません。粛々と初期対応が始まります。
これまでの怪獣映画なら海面の爆発が起きた次のシーンではテレビのニュースになっていて海中の調査が始まって…というパニック映画として展開するのがセオリーでしたが、今作はパニック映画よりもポリティカル・フィクションの側面が強いことの現れです。
次回もご期待ください。
参考文献
シン・ゴジラ機密研究読本 富士見書房
ホビージャパンMOOK 789 シン・ゴジラ 政府・自衛隊事態対処研究 HobbyJAPAN
ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ 株式会社カラー
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